とんちで一攫千金!

 のんびり後を追いかけます。今回の机上旅行はトルコです。

 さて、常日頃から私の財布には空っ風が吹いているので、毎月給料日前もなればやりくりに四苦八苦、今読んでいる本の間にお札が挟まっていないだろうか、道端に札束の入ったトランクでも落ちていないだろうか、などと妄想を食べつつ月末を乗り切っているのですが、なんと、トルコの昔話では空からお金が降ってくるのです。いったいどういうことかと言いますと……

*『天からふってきたお金』
 今から800年ほど昔のトルコに、ナスレッディン・ホジャというおじいさんがいました。アクシェヒルの町でイスラム教の神学校の先生をしていたホジャは、たいへん賢くユーモアにあふれていたそうです。そんな彼が、様々な難問をとんちや知恵で切り抜ける話がトルコには600以上も伝わっています。その中の1つが「天からふってきたお金」の話です。

 お金が入用なホジャは中庭でアラーの神様に祈りを捧げています。「神さま、どうか、1千クルシュおさずけください。それよりちょっとでもすくなかったら、ホジャはいただきません。」それを聞いていた金持ちの商人は、ホジャをからかおうと思い、999クルシュの金貨の袋を2階から放り投げます。ホジャが金貨を数えてみると、1千クルシュに1クルシュ足りません。何度数えても同じです。商人はホジャが金貨を置いていくだろうと思ったのですが、なんとホジャは、神様がお金を数え間違えたのだろう、自分が1クルシュを神様に貸すので都合のよいときに返してくれればいいからと、金貨の入った袋を持っていってしまいます。そこで慌てたのは商人です。自分の金だから返してくれと言うものの……
 その後、裁判にもつれこむのですが、そこはとんち名人、服や馬まで手に入れて、してやったり!そして最後はトルコ国民に愛されているホジャらしい幕の引き方です。
 この話を読んで以来、月末には「神様!どうかお金をおさずけください。」とつい天を仰いでしまう私です。

 本書には全部で16のホジャ話が入っています。どれも愉快、なるほど!と思わず膝を打ちたくなる“おち”が待っています。トルコでは誰もが知っている有名人、ナスレッディン・ホジャの物語であなたもちょっとだけトルコ通。

天からふってきたお金―トルコのホジャのたのしいお話 (岩波おはなしの本 (9))

天からふってきたお金―トルコのホジャのたのしいお話 (岩波おはなしの本 (9))

 佐々木マキさんの絵でも楽しめます。こちらはお話2つ。

ナスレディンのはなし (ランドセルブックス)

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